フリーターにとって「自由」とは何か 読了
- 作者: 杉田俊介
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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多くの書評でも言われていたがこの本は在りがちな「フリーター擁護/批判論」等では決してない。それは著者の視線の誠実さが一面的な考えを常に疑い、時には自らの立場すらも容赦なく断罪しようとする。自己にも周囲にも世界にも平等に思考と懐疑の鉈が振り回される*2。だが、その切れ味は鋭いわけではなく、安易な結論を結ぼうとはしない。切った先から鮮血のように反論と逆説が溢れ出てくるのだ。また、第三世界からの搾取の指摘も胸に響いた。私たちはこの国に住む限り搾取の連鎖から逃れることも出来ない。韓国製のコートを羽織り、中国製のジーンズを履き、ベトナム製のフリースを着続ける*3。
その中から掬いだされる展望は「存在権」の確保(それも現状を肯定せずに受け入れた上で)を目指す所からはじめるべき。と締められている(様に感じる)。
最初の就職先を過労によるヘルニアで退職し、その後の再就職もうまくいかず、働くこと自体に懐疑的になっていた私には、目から鱗、金言の宝庫であった。この本は事あるごとに読み返して自分の立ち位置を計測するアンカーとなると思う。
そう、「たたかいは、これから」なのだから。
追記:しかし、時折聞こえる「電波」の記述は続けよう。極論はまた思考の肥やしともなりうるのだし、暗く澱んだ思考もどこかへ放出しないとね…。